行政法の勉強法
このサイトでは行政書士試験に記述抜きで180点以上得点する独学勉強法に紹介している。
今回は行政法の勉強法について詳しくみていく。ここに書いた独学勉強法で19問中18問得点することができた。
前提:各範囲ごとに勉強法がまったく違う
まず行政法の勉強法として次のことを頭にとどめてほしい。
各範囲ごとに勉強法がまったく違う
行政書士試験では行政法が配点の多くを占めており、300点中実に112点が行政法からの出題となる。行政法とひとくくりにしているが、中身はさらに行政不服審査法や行政事件訴訟法等に分かれている。下の表は範囲ごとの出題傾向だ。(試験概要に詳しい表を載せている。)
- 行政一般
- 専門用語(+判例)
- 行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法
- 条文(+判例)
- 国家賠償法
- 判例
- 地方自治法
- 条文
- 国家行政組織法・内閣設置法
- 条文。条文はココ(国家行政組織法、内閣設置法)
- その他
- 複合問題が多い(行政不服審査法と行政事件訴訟法を用いた問題等)ので、上記学習を進めることで対応可能。ただ国家公務員法からの出題があるので条文を読んでおくと対応できる場合が増える。条文量が多いので優先度はもっとも低い。時間がなければ捨てて構わない。条文はココにある(国家公務員法)
見て分かるように範囲ごとに出題傾向が全く異なる。またそれだけではなくどこまで暗記するかという「暗記の濃度」もそれぞれ異なる。
すなわち受験生としてはそれぞれの出題傾向ごとに全く異なった勉強法に切り替える必要がある。独学ではこの切り替えの大切さを教えてくれる講師が周りにいない。これも行政書士試験を難しくしている要因だと思う。
勉強法を行政法の勉強の流れと合わせて一つずつ見ていこう。
①専門用語
まずは行政法の全体像を知る必要がある。
行政法の学習では基本テキストを買ってしまっているなら基本テキスト、そうでないなら「国家試験受験のためのよくわかる行政法」等の行政法について書かれた入門書を読み終えることから始めるのが一番の近道だと感じた。
法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為のような専門用語はこの段階で試験に通用する知識をつけることが可能だ。
②条文読み
行政法では条文読みがとても重要だ。条文読みだけで6割は得点が取れるようになる。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法は条文からの出題がとても多い。この3つだけは必ず条文を読んでおこう。
また地方自治法、国家行政組織法、内閣設置法も上記3つの分野と同じく条文からの出題がほとんどの分野だ。
ただ、これらは行政手続法等に比べ条文量と配点のバランスが悪い。また地方自治法に限って言うと条文をすべて読むのは不可能であり時間のムダになる。
地方自治法、国家行政組織法、内閣設置法に関しては空いた時間に部分的に読む方法がいいと思う。
「どれくらい読み込むか」だが、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法については条文の細かいところまで覚えている状態を目指そう。条文数も少なく、それぞれの条文で似通った部分があるのでまとめて覚えると思ったより簡単に覚えることができるはずだ。
例えば行政手続法で「行政指導の中止等の求めを受けた行政機関はその改善に努めなければならない。」と聞かれたら「確か努力義務じゃなかったよな。×だな」が出てくるぐらいの濃度で覚える。(例は行政手続法36条の2から出題した。この条文からまだ問題が出題されていないので狙い目だと思う。)
逆に地方自治法についてはもっと不確かな暗記の方法でいい。暗記というよりも「なんとなくそんな条文があったな」程度の濃度で構わない。
国家行政組織法と内閣設置法については条文数はそこまで多くないが配点がとても少ない。時間がなければ捨ててもいい分野だ。もし時間があるなら国家行政組織法のなんとなくの数字を覚えておくといいと思う。
条文読みの濃度についてはこちらにまとめたので参考にしてほしい。
- 行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法の暗記ポイント
-
上記3つの条文問題でイマイチ肢を絞ることができず、行政法に対し苦手意識を持っている方はいないだろうか。
これは大体の場合条文読みが不十分で起こっている。すでにかなりの時間を条文読みに費やされていると思うがあとほんの少しが足りていない。これらの科目はかなり細かい条文知識を問うてくるので、少しでも暗記抜けがあるととたんに肢が切れなくなることが多い。あれだけ時間を費やしたのに得点が出ないと行政法全体に対し自信が持てなくなり、勉強が遠ざかり、さらに記憶が抜け落ちていく悪循環に陥ってしまう。
とにかくこの3科目は条文学習が肝だと意識してもらいたい。また暗記については民法のように条文の意味を考えるのではなく、シンプルにゴロ合わせ等で暗記する方が効率がいい。学校の校則に明確な意味がないのと同じだ。そしてとにかく何度も読むこと、似通った3つの条文の細かな違いを意識することが大事だ。
②判例知識
判例の知識は条文の知識に次いで試験で求められる。特に国家賠償法ではほとんどの出題が判例からなのできちんと押さえておくべきだ。
行政法は全体像と条文読みの勉強法をとるだけで6割までは簡単に得点する事が出来るようになる。
ただそこから先がなかなか伸びない。行政法には判例から出題される問題も数多く、どうしてもその部分の知識が不足する。過去問や模擬の解答に書いてある判例を検索することで独学でもある程度は知識を補うことが出来るが、この方法だと網羅的に勉強しているわけではないので、本試験で知らない判例に当たった場合解くことができなくなる。
なので網羅的に学習するための教材の「行政判例ノート」という書籍、もしくは行政判例をまとめたサイト(ココ)で判例の知識を補う。ただしこのサイトは100選すべてが掲載されていないので、できれば行政判例ノートの方を勧める。(ぼく自身は受験当時書籍があることを知らずサイトの方で勉強をしていた。)行政判例ノートもしくは上記サイトを3回程度読むだけでカンタンに得点が伸びるはずだ。
「判例をどこまで暗記すればいいのか」という暗記の濃度について。判例学習については全部覚えるつもりではなくその裁判がそうなった理由を大まかに覚える程度でいいと思う。全部で上記サイトを3回ほど読めば十分だ。
これだけで試験中、判例の問題が択一に出てきても「そういやそんな判例あったな」と思い出すことが出来る。知らない判例がなくなるので判例問題に対し苦手意識がなくなる。
勉強法の例:例えば上記サイトの上から二つ目の判例で「日本鉄道建設公団の地位」というのが載っている。この判例だと「ああ、運輸大臣から鉄道建設公団の指示は行政の内部的な事だから処分性がないんだな」というのがなんとなく頭に残る程度でいい。
基本テキストではいきなりなんの前ぶれもなく運輸大臣から鉄道会社への指示は処分性がないと記載されていることも多いが、それだけでは意味が分からない。
なぜそうなのかが分かっていると物語として記憶に残るので、ムリに覚えようとしなくてよくなる。(行政内部の指示は処分性がない、これはルールだと思うしかない。)
④行政法に限っては過去問もある程度有効
もしまだ時間に余裕があるのなら、過去問をもう一周するのもいいと思う。行政法は過去問の問題数が他の科目に比べると倍以上と多いので問題演習として用いることが出来る。(クイックマスターの行政法でも問題演習はできるがこれは少々やりすぎになるはずだ。行政法の問題演習については過去問だけで十分。)
試せていない勉強方法
僕自身は基本テキスト&判例サイトで勉強していたので、すべては試せていないが、より効率のいい独学勉強法は以下の方法になると思う。
- 基本テキストではなく「国家試験受験のためのよくわかる行政法」で学習スタート
- 六法(スマホのアプリ版)で条文を読む
- ここまでで判例知識が足らなければ「行政判例ノート」or「サイト」
次回は民法
次回は民法の勉強法について詳しくみていく。民法はとにかく出題範囲が広く、他の単元のような暗記だけでは試験に対応するのが難しい。
- 今回紹介した参考書
・行政法に関して
基本テキストと過去問だけでもある程度解けたので、新しくテキストを買う事はしませんでした(テキストをあまり増やしたくなかったため)
・勉強法について
条文と凡例だけでは行政法の一般知識、というか基礎的な問題に対応できないはずです。基本テキストや「国家試験受験のためのよくわかる行政法」などを読んでおく方が判例も条文も理解しやすくなると思います。スー過去で代用できるならそれでもいいかもしれません。
試験がんばってください。
2018/08/29 20:37 ramuneg行政法の教材選択で、スー過去が選ばれなかった理由とはなんでしょうか?問題数の多さ、試験で問われる点が異なることなどでしょうか?
2018/08/25 18:22 来年度合格希望者あと、条文と判例だけやる、というのは極端になりすぎでしょうか?入門テキストでのみでは全体構造が見えたとは言えませんか?