社労士と行政書士どちらに頼む?介護、保育の許認可申請

資格

2016/03/22(火)

介護施設、保育施設の許認可申請を頼む

介護施設や保育施設を設立する場合、市役所に届出が必要です。そんなときに社労士や行政書士に書類の作成・提出を依頼することができます。

介護施設や保育所の場合に、社労士と行政書士のどちらに頼めばいいのか見ていきましょう!

法律上、片方が上記業務を行うと厳密には違法となるようです。なので間違った方に頼むといざ申請となったときに却下されてしまう場合があり注意が必要です。

こういった問題は業際問題と呼ばれるようですので、今回の記事では依頼の際の価格とかではなくいわゆる社労士と行政書士の業際問題についての紹介となっています。

業際問題(ぎょうさいもんだい)

業際問題(ぎょうさいもんだい)とは異なる士業(弁護士、税理士、司法書士、社労士等)間で起こる問題で、どちらがその仕事をするのにふさわしいかの問題です。

よく言われるのは、「どの士業が登記を行えるのか」「どの士業が法律の相談に乗ることができるのか」などです。

各士業ができる仕事の範囲はそもそも法律で決められているのですが、条文の解釈の違いによって業際問題が生じてしまうようです。違反すると罰金だったり資格剥奪だったりとかなり重い処分となる場合もあるようです。

社労士と行政書士について

そんな業際問題が社労士と行政書士の間にも存在します。というのもどちらもお客さんの代わりに書類の作成と提出を行う仕事を行っているので、かなり仕事が似ているんですね。

まず最初に、社労士と行政書士がどういった仕事をしているのか見てみましょう。

社労士(しゃろうし)とは

社労士(しゃろうし)とは正式には社会保険労務士という名前で、名前のとおり社会保険関係の届出や労務関係(中小企業の助成金とか)の書類を本人の代わりに作成、提出することができます。またこれは社労士の資格がないとできない「独占業務」とされています。これは社会保険労務士法というもので決められています。

ぼくも調べるまでは社労士という名前さえも聞いたことがなかったのですが、大きな企業では就業規則等の作成も社労士が行っていたりするようです。

かなり昔のはなしですが、社労士という資格がなかったときは、行政書士が社会保険や労務関係の書類作成も行っていた時代がありました。ただ、時代が進むにつれて社会保険や労務関係の書類について専門性が高くなっていき、行政書士が対応するには難しくなっていきました。そこで「社会保険と労務関係の専門家を作ろう!」となり、晴れて社労士という資格が生まれました。

社労士の独占業務
社会保険と労務の書類作成と提出
独占業務

独占業務というのは資格を持っていない人がその業務をすることを一律に禁止している業務のことです。

このままだと家族の手伝いで書類を作成するのも違法になってしまいますので、行政書士と社労士に関しては但し書きがあります。「報酬を得て」かつ「繰り返しその業務を行う」のはダメだよ、違法だよ、となっています。「報酬を得て」というところと「繰り返し」という部分がミソです。

身内がやっている会社の助成金を無報酬で申請してあげたり、本来家族が届け出るものを一度だけお金をもらって市役所に提出するのはまったく問題ありません。

「報酬を得て」「繰り返し」ということなのであくまで仕事としてそういうことをやっちゃダメだよ、というルールになっています。

行政書士(ぎょうせいしょし)とは

行政書士(ぎょうせいしょし)とは、本人に代わって行政機関に出す書類の作成と提出を行うことができます。ただ「他の法律で制限されているものを除いて」という但し書きがあります。これは行政書士法という法律で決められており、これも「独占業務」とされています。

本当にとても昔のはなしで、まだ字の読み書きが苦手な人も多い時代、役所に提出する書類を代行して行う代書屋という職業がありました。当時は質の悪い代書屋も多く、字の読み書きが苦手な人をだますような行為もまかり通っていました。なので、代書を行う仕事を資格にしたのが始まりといわれています。

行政書士の独占業務
他の法律で制限されているもの以外の書類作成と提出

社労士と行政書士

ということでこの二つの資格で出来ることは冒頭でも述べたとおり、お客さんに代わって公的な書類の作成と提出、となります。

でもその範囲が違いました。まとめるとこうです。

社労士
社会保険関係の届出や労務関係(中小企業の助成金とか)の書類を本人の代わりに作成、提出
行政書士
他の法律で制限されているものを除いた書類を本人の代わりに作成、提出

そして上記の取り決めは社労士、行政書士ともに社会保険労務士法、行政書士法で決められているのでした。

また行政書士法では上記のように、行政書士は他の法律で制限されているものの作成、提出は出来ないのでした。

なので二つをまとめると行政書士は、社会保険労務士法で決められている「社会保険関係の届出や労務関係(中小企業の助成金とか)の書類を本人の代わりに作成、提出」をすることが出来ないことになります。

つまり、

社会保険やら労務のことは社労士、それ以外は行政書士に依頼すればいいんだな!

ということがわかりました。

ここでもう一つ気になる点が出てきますね。どこからどこまでが「社会保険や労務」に含まれるのでしょうか?

社会保険労務士法に独占できる届出の一覧が載っている

「社会保険関係の届出や労務関係(中小企業の助成金とか)の書類」だけだと、「これは行政書士の独占業務だ!」「いやっ!これは社労士の独占業務だ!」みたいに後から争いになってしまいますよね。

なのでそこらへんはちゃんと法律で決められているんですね!こういった事態に備えて法律を作っている人は本当すごいと思います。

抜粋すると、

社会保険労務士法から一部抜粋
一 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) 三 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号) 四 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号) 二十の二十一 石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号。第三十八条及び第五十九条の規定に限る。) 二十一 健康保険法 二十四 厚生年金保険法 二十五 国民健康保険法 二十六 国民年金法 二十九 児童手当法(昭和四十六年法律第七十三号) 三十 高齢者の医療の確保に関する法律 三十一 介護保険法

こんな感じです。本当はもっと載っているので詳しく知りたい方は社会保険労務士法のずっと下のほうに載っている「別表第一 (第二条関係)」のところを見てみてください。

石綿(アスベスト)のことも社労士の仕事に含まれているんですね!なんかイメージがわきづらいので驚きましたが、労働災害のつながりからなのかもしれませんね。

ということでココに載っている法律で提出が義務付けられている届出・許認可は社労士の独占業務になることになります。

ただコレも一つ面倒で、どの届出がどの法律で義務付けられているかなんて普通は知らないですよね。頼む側としては士業毎にできる仕事が決められていて、場合によって違う人に頼まないといけないのは少し面倒な部分ですよね。

どっちの独占業務かは社会保険労務士法に載っている法律で義務付けられた届出かどうかで判断できる。でも面倒くさい…。

市役所員も知らない?

ぼくもどの届出がどの法律で義務付けられているのかわからなかったので、介護施設の届出と保育所開設の届出について市役所に問い合わせてみたのですが、担当してくれた職員の方も詳しくはわからないようでした。

介護施設の届出・許認可は社労士の独占業務

それでいろいろ(社労士会に問い合わせたり…)調べたところ、介護施設の届出・許認可申請については社労士の独占業務ということがわかりました。

先ほどの社会保険労務士法の抜粋のところに「介護保険法」と書かれていますよね。介護施設をつくるときの届出はこの介護保険法で義務付けられているということなので、社労士の独占業務ということでした。

介護施設の届出・許認可申請
社労士しかやっちゃダメ!

保育所の届出・許認可は行政書士の独占業務

こちらも行政書士会に問い合わせたりいろいろ調べたところ、保育所の届出・許認可申請については行政書士の独占業務ということがわかりました。

この保育所の届出を義務付けている法律は残念ながらわからなかったのですが、少なくとも社会保険労務士法には書かれていないので社労士の業務ではない、ということは他の法律で制限されていないから行政書士の独占業務、ということのようです。

保育所の届出・許認可申請
行政書士しかやっちゃダメ!

社労士と行政書士の業際問題はめんどうくさい

今回わかったことをまとめました。

介護施設の届出・許認可申請
社労士しかやっちゃダメ!
保育所の届出・許認可申請
行政書士しかやっちゃダメ!
もし違反すると依頼者側は…
申請が通らないおそれ
もし違反すると士業側は…
罰金や資格剥奪のおそれ

今回調べてみて、市役所の方や社労士会や行政書士会の方も詳しくは把握できていないぐらい複雑なことがわかりました。ホント、社労士と行政書士の業際問題はめんどくさい仕組みになっているんだなと痛感しました。依頼するにしても、独占業務ではない士業にお願いしたら市役所で却下されてしまうかもしれませんし…。

もう少し簡単になったらいいのになあ。